【果てしなきスカーレット】
映画「果てしなきスカーレット」は2025年11月21日(金)に公開されたオリジナルアニメ映画
アニメ映画「時をかける少女」や「サマーウォーズ」の監督を務めたことで有名な細田守さんが、自身が脚本や小説版も執筆してつくったオリジナルアニメ映画、それが「果てしなきスカーレット」だ。
この作品を劇場へ観に行ってきたため、ネタバレあり、なしの両方のレビューを書いていく。なお私が細田監督のアニメ映画を観るのは本作が初めてだ。
新たまちゃん
ネタバレありの感想は、このページの一番下に隔離してあるよ
【どんな作品?】
「果てしなきスカーレット」は死後の世界で繰り広げられる復讐劇
本作は16世紀のデンマークの人々を中心としたファンタジー復讐劇だ。そんなわけで舞台はデンマーク…と言いたいところだがそうではなく、メイン舞台は死者の国である。開幕直後から主人公も復讐対象となる宿敵も全て死んでいるのだ。
主人公は既に勝手に死んでいる相手の魂を消滅させるために冥府を彷徨うことになる。
【映画のあらすじは?】
父王を叔父に殺された王女スカーレットが現世での復讐に失敗し、死者の世界でリベンジを決意する
主人公は16世紀のデンマーク王家に一人娘として生まれたスカーレットという少女だ。彼女の父は温厚で人望に厚く、民に慕われていた。しかし「野心が足りない」という理由で妻(王妃)と叔父に不満をぶつけられ、謀略の末に殺されてしまう。
父王を心から愛していたスカーレットは、叔父&その一派を殺して復讐を果たすべく剣と格闘の腕を磨き続けたものの、復讐実行初日にあっけなく叔父の返り討ちに遭い命を落とす。
……が!死者の国で目覚めたスカーレットはそこの住民から「あんたの復讐相手も全員もう死んで死者の国に居るよ」と聞かされるのだ。
かくしてスカーレットは、既に死んでいる復讐対象者に刃を突きつけるべく、死者の国を彷徨うことになるのだった。
【ネタバレなし感想】
世界観にもキャラにも感情移入できず、様々な違和感が徐々に強くなっていく
開始時に人間関係の背景がほぼ語られず、「野心がないだけでなんで殺害対象になるの?」、「なんで実母が実子を強火で憎んでるの?」、「叔父さんが急に王妃にぞっこんになるのなんで…?」、「というか叔父さん&一味はどうやって全員高速で死んだの?(戦に敗けたレベルの人数が、幹部~一般兵まで死者の国にいる)」などなど、進めば進むほど、ありとあらゆるシチュエーションに疑問が湧いてくる。そしてそれらは作中でまったく語られない。
疑問詳細についてはネタバレありの方に詳しく書くが、そもそもが既に全員死んでいて、かつ「この世界には死後の生まれ変わりもない」という設定のため、もはや復讐する意味が一切ないのでは……。と開幕から虚無の気持ちになってしまった。
加えて完全に写実寄りの3DCG背景にアニメタッチのCGキャラが立っているのが、妙にミスマッチでキャラが浮いて見え、最後までその違和感に慣れないままだった。
音声演出や声についても、シリアスな場面でサウンド演出だけがコミカルだったり、作中のキャラの心情や成長に対して声の演技が一律で、ラストに近づけば近づくほど中の人と外側のキャラの乖離が大きくなる…という変な感覚を味わうことになった。
ついでに言うと主人公を筆頭に言動や思想に一貫性がなく、「死者だからたぶんみんな意識混濁状態なんだな…」という状態で感情移入が困難だった。
残念ながら私には、本作は向いていないようだ。
【本作はどんな人向け?】
「果てしなきスカーレット」は監督のファンや背景考察が好きな人向き
この映画は細田監督のファンで、これまでの作品を全て観てきた方がメインターゲットのように感じた。監督の考え方や作品で叶えたい事を考察し、全作品を通してメッセージを感じ取りたい。そんな人が観るべき作品に思う。
もしくは説明が少なく矛盾も多々見られるような作品をあえて分析して紐解くのが好き、という層にも向いているように思う。
新たまちゃん
「絶対誰も見るな!」っていう作品ではないなって思った
【入場特典はある?】
映画「果てしなきスカーレット」に入場特典はない
映画「果てしなきスカーレット」の劇場コラボドリンクポスター
残念ながら本作には劇場の入場者特典は用意されていない。しかし屋外壁面広告、劇場内大型広告、劇場コラボドリンクなどがあり、プロモーションに大きく力を入れていることが感じ取れた。コラボドリンクには購入者特典としてアクリルスタンドが付いてくるようだ。
【パンフレットは買うべき?】
正直おすすめはできないが、イラストに惹かれた人、スタッフロールをじっくり見たい人は買うべき
映画「果てしなきスカーレット」パンフレットの表紙と裏表紙
本作のパンフレットはB4サイズの横開き仕様で、表紙には「Scarlet」の箔押しがある。値段は990円。内容は一般的なパンフレットと同じくキャストおよび監督、作画監督へのインタビューやイラストギャラリーだ。特徴的な点として、スタッフロールがまるごと全部収録されている。昨今のパンフレットとしては珍しい特徴なので、全スタッフを完璧に把握したいという人は重宝する一冊だ。
【グロ描写はある?】
激しいグロシーンはない。とはいえ戦闘や略奪シーンは多め
本作は死後の世界が舞台なので、致命傷を負った人間は黒い煤(すす)のようになって消える。そのため激しい人体欠損や流血描写は少な目だ。とはいえゼロではないので血が苦手な方は気を付けていただきたい。
【性的な描写はある?】
軽めのキスシーンまで
キスシーンはあるがそれ以上の過激な描写や、セクシャルな感情を煽るような描写はない。親子や交際初期のカップルで行っても大丈夫だ。
【独りor誰かと。観るならどっち?】
誰かと一緒に行って視聴後の感情を言い合うのがベターだが、興味のない人を誘うのはやめた方がいい
独りで行くと少々感情をもてあましてしまうかもしれない(私がそうだった)。なのでこの映画は「元々本作に興味のある複数人」で行くのが最も良いと思われる。
逆に事前に興味がない人を誘うのはかなりリスキーだ。シアターから出たあと相手が黙り込んでしまったり、ちょっと重たい空気になってしまう恐れがあるからだ。
【観るべき?】
個人的には薦められない。興味がある場合でも配信を待った方が良い
本作は監督ファンか、出演キャストのファン、またはとにかくたくさんの映画を劇場で観る経験が好き!という方以外には正直薦められない。劇場での鑑賞料金に見合う内容だと納得できる人が少数だと思われるからだ。
それでも気になっている方はサービスデーなどで鑑賞料が割安になっている日を狙っていくことを強くお勧めする。