過食症を克服した90日間の記録

仕事の失敗から始まった摂食障害との闘い
実体験から学んだ回復への道のりと、周囲ができるサポート

目次

  1. 1 はじめに - きっかけは仕事の失敗
  2. 2 過食症の日々 - 繰り返される悪循環
  3. 3 身体に現れた3つの変化
  4. 4 転機 - 親友の一言
  5. 5 回復への道のり
  6. 6 過食症のサインと周囲ができること
  7. 7 まとめ - 伝えたいこと

はじめに - きっかけは仕事の失敗

仕事の失敗に悩む様子のイラスト

過食症になったきっかけは、仕事で失敗したことだった

私は新卒で入社した素晴らしい会社を3ヶ月で辞めました。

ブラック企業で追い詰められて……というワケではありませんでした。自分で独立して事務所を作れると思い、意気揚々と辞めたのです。しかし、全くうまくいかずに無収入になってしまいました。

当時の精神状態

  • 過剰にあった自信が完全に枯渇
  • 無職である自分への家族や周りの目が気になる
  • ストレスが溜まっていくばかりの日々

そんなある日のことでした。駅中にある一軒のスイーツ店が、ふとした拍子に私の目に留まったのです。シュークリーム、ショートケーキ、アップルパイ、スイートポテト……。

ショーウィンドウをぼんやり眺め続けているうちに、それらのスイーツたちが、まるで救いのアイテムのように見えてきました。思えばここ数ヶ月、甘いものをまったく食べていなかったのです。

大量のスイーツを食べる様子のイラスト

家で猛烈に食べまくった

私はすぐさま店員さんに声をかけ、食べたいものを全て買って家に持ち帰りました。それぞれに趣向を凝らされたスイーツの見た目の美しさと、濃厚な甘味が身と心に染み渡り、幸せの極地を感じました。

その時は何もかもが忘れられたし、人間は食べるために生きているのではないか?とさえ考えました。

しかし完食した直後、私はすぐに罪悪感に苛まれました。流石に食べすぎたと後悔したのです。当時の私は中肉中背で筋肉質な体型だったのですが、この体型が太って崩れるのが怖かったのです。

そこで思いついたのが「食べたものを吐き出す」という方法でした。

誤った幸福感を感じている様子のイラスト

この時、私はこの方法が自分の人生で最高の発明だと錯覚していた

好きなものを食べて快感だけ味わい、全て吐き出す——嘔吐後は達成感があり、最高に気分が良くなりました。

それからというもの、私は毎日過食と嘔吐を繰り返すようになりました。完全に「過食症」というヤツです(当時は症状名すら知りませんでした)。

過食症の日々 - 繰り返される悪循環

トイレで嘔吐する様子を表すイラスト

過食症になってから体にいくつかの変化が起こった

過食症になってから約1ヶ月……。私はすっかり、好きなものを食べて快感を得て、吐いてスッキリするというサイクルにはまっていました。

吐く技術も上達しており、指を使わなくてもお腹の筋肉を使って胃を持ち上げ、簡単に吐けるようになっていました。元々アメリカンフットボール部に所属していて筋肉量が多かったのです。

自分はこれも最高の特技を会得したのだと勘違いしていました。しかし実際は逆で、その行動は私の体に大きなダメージを与えていたのです。

身体に現れた3つの変化

顔の変化を表すイラスト

1. 顔の形が変わってきた

体は痩せていったものの、顔が横に広がったように見えてきました。最初は気のせいかもしれないと思っていましたが、実は耳下腺が腫れていたのです。

耳下腺の腫れについて

  • 耳下腺とは耳の下にある唾液腺
  • 過食や嘔吐を繰り返すと炎症を起こして腫れる
  • 吐いた後、顎の付け根あたりにピリピリと違和感
  • 家族に聞いても「そうは見えないよ」という返答
  • 鏡で見ると明らかに顔が丸くなっている
身体の衰退を表すイラスト

2. 目眩やしびれが起きるようになった

十分なカロリーや栄養が摂れていなかったので、体が衰弱してきました。時々目眩がして倒れそうになったり、身体中がピリピリするような変な感覚が頻繁にありました。

これは低血糖や低カリウム血症などの症状でした。私は自分が痩せて美しくなっていると思っていたのですが、その裏で体が危険信号を発していたのです。

3. 精神的な不安定さ

身体的な症状だけでなく、精神的にも不安定になっていきました。常に食べ物のことを考え、次はいつ食べて吐くかばかり考える日々でした。

転機 - 親友の一言

顔の腫れに気づく様子のイラスト

過食症から抜け出すきっかけになった出来事

私は過食症になってから、どんどん顔が横に広がっていくことに恐怖を感じていました。耳下腺が腫れているのが原因だったのですが、ある日それを親友に指摘されたのです。

親友
親友
「う〜ん、顔どうしたの?」

親友に言われた時はショックでした。ショックを隠しつつ「前からこんな骨格だったよ」と答えたところ……

親友
親友
「いや、違う。前は腫れてなかった。病院に見てもらったら?」

とはっきり言われました。結果として、その言葉が転機となったのです。

親友の指摘で気づく様子のイラスト

親友の言葉で、自分が変わってしまったことを実感した

自覚して自分の顔をじっくり観察すると、顔の耳の下が明らかに膨れ上がってきているのがわかりました。そして左右と比べても明らかに右側が大きく腫れていました。

しかも、何日経っても治る気配がありませんでした。初めて会う人なら、元々そういう顔の形なんだろうと思われてしまう程度ではあったものの、一度気になりだすと止まらなくなりました。

当時の不安

  • もし一生治らなかったらどうしよう
  • 医者へ行くにも、何と言えばいい?
  • 食べて吐いていましたなんて恥ずかしくて言えない
  • どこの誰に助けを求めれば良いのか分からない
食べ物を無駄にしている罪悪感を表すイラスト

何より食べ物が勿体なかった

吐くのが正しい行為ではないと気付いてから、自分は食べ物を捨てているのだという罪悪感が日々募っていきました。

それに「食欲を満たすことが人間の最大の幸せだ」と思い込んでいたものの、人生にはそれだけでなく、もっと大切なことがある気がしました。

そんな想いが募りに募って、ようやく私は「もう食べて吐くのはやめよう」と決意したのでした。

回復への道のり

健康的な食事を表すイラスト

まず、吐く事を封印した

また、爆買いもしないと決めて、外出しないようにしました。普通の食事を食べた後、吐きたくて仕方なくなりましたが、我慢して胃の中に残すことに集中しました。

すると次の日から、少し調子が良くなってきました。それからは1度でも吐くとまた元に戻ってしまいそうで、逆に吐くのが怖くなり、自然と吐かなくなっていきました。

顔の腫れが治った様子のイラスト

ついには顔の腫れも1ヶ月ほどで治り、元の顔に戻った

過食症から抜け出すことは簡単ではありませんでしたが、親友の一言がきっかけで変わることができました。そして自分の体と心に優しくなろうと心掛けるようになりました。

過食症から回復するまでに約1ヶ月かかりましたが、その後現在に至るまで再発はしていません。体も心も健康になり、顔も元の形に戻すことができました。

それからというものは食事や栄養について徹底的に調べて、アスリート並みの食生活を過ごしています。健康的な食品について野菜のページで紹介しているので、興味があれば読んでみてください。

過食症のサインと周囲ができること

過食症に悩む人を支える様子のイラスト

もしかしたら、身の回りの人が過食症に悩んでいるかもしれない

家族、または身近な人が過食症になったら、できる限り早めに気付けるようにしたいものです。私の経験から言えることは、同じように苦しんでいる人がいる場合、トイレに必ずその兆候が現れるということです。

過食症のサイン

  • トイレから独特の匂い(胃液と甘いものが混ざった匂い)
  • 食後すぐにトイレに行く習慣
  • 大量の食品を購入している
  • 顔の腫れ(特に耳下腺周辺)
  • 体重の急激な変化
  • 精神的な不安定さ

吐いた後、どんなに綺麗に後始末したとしても、胃液と甘ったるいものが混ざった独特の匂いが個室内に残るのです。例え本人が綺麗に掃除して隠したつもりになっていても、吐いた本人はその匂いに鈍感になっているため、気付かないことが多いのです。

「何だかトイレの匂いがいつもと違う……」と感じたら、それとなく普段の生活も気にかけてみてください。本人は吐くことで美しくなると勘違いしている場合があるので、過食嘔吐のデメリットと、あなたの事が心配なのだということも伝えてあげてください。

周囲ができるサポート

  • 決して責めない
  • 話を聞く姿勢を示す
  • 専門家への相談を勧める
  • 一人で悩まないことを伝える
  • 回復を信じて寄り添う

まとめ - 伝えたいこと

回復して前を向く様子のイラスト

今回の話の内容を5つのポイントにまとめました

5つの重要ポイント

  • 私は仕事で失敗したことがきっかけで過食症になった
  • 過食症になってから、好きなものを食べては吐くという行為を毎日繰り返した
  • 過食症は私の体に大きなダメージを与えた(顔の腫れ、目眩、しびれなど)
  • 過食症から抜け出すきっかけは、親友に顔の腫れを指摘されたこと
  • 変わってしまった自分に気づき吐くことをやめた結果、1ヶ月かかって元の体調に戻った

過食症は一人で悩まず、周りの人や専門家に助けてもらいましょう。そして身近に過食症の人を見つけたら、決して責めずに力になってあげてください。

この体験談が、同じように苦しんでいる方や、その周囲の方々の参考になれば幸いです。回復は可能です。希望を持って、一歩ずつ前に進んでいきましょう。