とあるAIをテーマにした映画の話をしよう。私が監督するこの作品のタイトルは『RANK』。画面には一切AIという文字を出さない。なぜなら、これは技術の話じゃなく人間の話だからだ。

時は2030年。そう、今から5年後の未来だ
序幕1:神の手

シリコンバレーの高級レジデンス。朝の5時、CEOのミシュランが朝の身支度をしながらAIに指示を出している。
「来週のプレゼン資料の作成を頼む。競合他社の弱点分析を重点的にな。
それとドイツ支社向けの契約書も確認と修正しておいてくれ」
15分後、依頼通りの資料ができあがる。
ミシュランは朝食を食べながら、目の前のホロディスプレイに映された資料を確認する。
序幕2:零れた雫

ミシガン州デトロイト。工場跡地に建つアパートで、失業中のサミュエルがオンライン面接を受けている。サミュエルは50代の元自動車整備士だ。
しかし会社のAIによるコスト削減の波を受けリストラされてしまった。
古いノートPCの画面越しに、面接官がサミュエルに問いかける。「あなたはこれまでの業務で、どのようにAIを活用されてきましたか?」
(……またか)
サミュエルの瞳が一瞬ゆらぐ。しかし彼は、それを振り切るように快活に答えた。
「AIは使ったことがありません。ですがAIには真似できない、長年の実務経験に基づいた知識と技術があります!」
「それは素晴らしいですね」
面接官は笑顔で頷き、そっと不採用者リストに彼の名を追加した。
第2幕:はじまり
ここからが本当の物語だ。主人公は3人
アンジェラ(28歳、データサイエンティスト)

AIツールを駆使して月収9500ドルほどを稼いでいる。彼女が務めているのは「Analytical Interface社」。ミシュランがCEOを務める会社だ。
ショーン(35歳、小学校教師)

生成AIで作られた生徒たちの図画を見る度に、教育の意義や方向性について迷いを感じる日々を送る
デイビッド(52歳、元新聞記者)

新聞社をリストラされた後フリーライターになるも、AIライターに仕事を奪われつつある。ちなみに序幕で出てきたサミュエルとはハイスクール以来の友人だ。
第3幕:見えない支配

「A社に今日できたマーケティングデータを送って。あと朝までにB社用のデータ解析もお願い。私は今から明日の8時までプライベートよ。緊急の連絡以外はコールしないで」
「かしこまりました。それではアンジェラ、よい夜を」
AIはそう答えて、自らモニターの電源を落とした。時刻は16時。陽は半ば傾いているが、窓の外はまだ明るい。
アンジェラは基本的に終日リモートワークだ。通勤に無駄な時間を使う事もなく、年収は平均以上。「自分はそこそこの成功を手にしている」彼女はそう自負していた。
しかし、時折思うのだ。
「私は何かを生み出せているのだろうか?ただAIを操り、AIに管理されるだけの、無機質な人生を送ってはいないだろうか」……と。
第4幕:教育への侵食

放課後の教室でショーンは、生徒たちから質問攻めに遭っていた。「先生、なんでこの宿題、計算を手でやらなきゃいけないの?AIなら早くて正確じゃん」、「絵だってAIなら綺麗な絵がすぐ出力できるのに。昔の方法で描く必要ってあるの?」
「それは……」
ショーンは答えられない。何故なら、彼女自身がその理由を見失っているからだ。
学校側からは「自分で考える力を養わないと将来困るから」という理由が提示されているが、子供たちには理解できない。
「ボクのパパ、会社でAIしか使わないって言ってたよ」、「ウチも家のこと全部AIに任せてる。掃除機も冷蔵庫も、みんなAIが付いてて色々やってくれるもん」、「だよなあ。大人が困ってないのにオレたちが困る未来なんてなくね?」
口々に言い合う生徒たちを、ショーンは困った顔で見つめるしかなかった。
第4幕:魂の在処

デイビッドは馴染みの出版社へ記事を売り込みにきていた。AIシステムによる雇用機会の損失についてまとめた記事で、5年に渡る取材と、長年の記者人生で築いたあらゆる人脈を駆使して書いた渾身作だった。
彼が書いた記事を読んだ編集者が言った。
「デイビッド、この記事はたしかによく書けてるし面白いよ。だけどさ、AIを批判する記事はウチでは載せられないんだ。AIはもう日常生活に不可欠な存在になってる。それを批判するってことは、大半の読者たちの生き方も否定することになるからね」
編集者はチラッとデイビッドの反応を伺うと、言葉を続けた。「デイビッド、君もそろそろAIを迎合するやり方にシフトチェンジしたらどうだい?幸い頼みたいネタはたくさんある。なに、プロンプトを覚えればすぐさ。1日10本も書いて、セルフチェックして納品。楽だしこちらも助かるし、君も稼げる。1石3鳥だ」
デイビッドは頷かない。
彼の信念が、自らの心に訴えているのだ。AIの記事には魂がないことを。
第5幕:選択の瞬間

クライマックスで3人の運命が交錯する。
アンジェラはデイビッドが自身のSNSアカウントで発信した、AIによる失職者についての記事を偶然読み、彼女が開発したAIシステムが何千人もの雇用を奪っていることを知る。
ショーンは学校で、完全AI主導の教育プログラム導入を受け入れるかの決断を迫られていた。多くの生徒たちの両親から、学校に嘆願があったのだという。拒否すれば彼女の失職は濃厚だ。
彼女が受け取った提案書には、アンジェラが依頼を受けて作成したデータが掲載されていた。
デイビッドは、とあるAI企業からオファーを受けていた。「AIによる記事の品質管理をしてほしい」。彼の専門性をAIの精度向上に使いたいのだという。報酬は毎月15,000ドル。
現在ほぼ失業同然の彼は大いに悩んだ。老いた母、そして愛する妻。大事な家族の幸せと己の魂を、秤にかける時がきたのだ。
終幕:希望なき希望

あれから2年の時が過ぎた。
アンジェラは適応障害の診断を受け、現在休業中だ。カウンセリングを受けながら、人との対話の意味を考え始めている。
ある日、いつものカウンセリングの後に、カウンセラーから報告を受けた。「来月からは週2回のセラピーのうち、1回はAI診療に変わります。ご希望があれば2回ともAI診療への切り替えが可能ですのでご検討ください」。
アンジェラは微かな耳鳴りを感じた。

ショーンは2年前、AI教育を拒否して小学校を去る選択をした。今では自力学習に力を入れる私塾を開き、意欲ある生徒たちに笑顔で授業を行っている。
ここで学んだ子供たちの未来がどうなるかは分からない。ショーン自身の収入も、公務員時代と比べて不安定だ。だが、ショーンの瞳に迷いはない。

デイビッドは妻と共に介護老人保健施設を訪れていた。母に会いに来たのだ。景色が綺麗な郊外にある施設で、清潔感がありケアも行き届いている。
「あなたのおかげで毎日穏やかに過ごせてるわ、ありがとう」
嬉しそうに微笑む母に、デイビッドは笑顔を返す。しかしその姿からは、かつて溢れていた魂のエネルギーは既に失われ、どことなくくたびれた印象を感じさせる。妻はそんな彼に、時折寂しさを感じずにはいられない。

時を同じくして、サミュエルはホートンレイクのゴルフ場で眩しい日差しを浴びていた。あれから彼は、小さな芝刈り機のメンテナンス工場に雇われていた。今日は出張メンテナンスの依頼で来たのだ。
サミュエルの前を、いかにも裕福そうな集団が通り過ぎる。先頭を歩いているのはAnalytical Interface社のCEO、ミシュランだ。だが、彼らの視線が交わることはない、ただそれぞれの日常が流れていくだけだ。

AIとの付き合い方に正解はない。では、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ

お前…いつもの黄パプじゃないな。もしやAIに乗っ取られてるのか?

ほんとにそうならエピローグで『物語の原作者はAIだった』ってオチがつくね
最後に

このストーリーはAI格差に着想を得てイラレブックが作成した、人の手によるオリジナルストーリーだ。AIにはまだ、矛盾や破綻なく長編ストーリーを作成するのは難しい。「人間なら無意識に知っている常識」や「人が感動するポイント」を理解できないからだ。
だが近い将来、それすらも克服したAIがきっと登場するだろう。

いまってAIに書かせると、独特のシュールなストーリーができあがるよね

てかAI格差がテーマだったのか。他の奴らとずいぶん毛色が違う内容になったな