更新: イラスト追加 初版:2020.02.12 8:15
アスパラガスの漢字
アスパラガスには2つの漢字表記もある
①石刁柏
これは英語の発音に当て字したという説がある。
アスパラガスをアルファベットで書くとasparagus音節を分けるとas・par・a・gus
発音記号はəspˈærəgəs
アス=əsp→エス→エィスュ→イシ→石
パラ=pˈær→パウ→パァウ→チョウ→刁
ガス=gəs→ガシュ→カシゥ→柏(カシワ)
アスパラガスをネイティブな発音で聞いて、 エィスュパァウガシュ…石刁柏だ!
…ということだろうか。 これが本当なら、その発想は なかなかブッ飛んでいる。 しかし何となく分からなくもない。
なんて思っていたら中国語の発音では。 シーディアォバァイだった。
どちらにせよ英語発音の当て字ではある。 エィスュパァウガシュ=シーディアォバァイ。
それぞれの言語圏によって、 喋り手と聞き手の捉え方は違うものだ。
それにアスパラガスがエジプトの方から アジア圏へと伝わってきた時代の人々は、 21世紀の現在とは発音が異なっていただろう。
1800年代以前の音声データが残っていないので 当時の人々がどんな喋り方をしていたかは分からない。
しかし残っている文献の文字を読もうとしても、 とてもじゃないがスラスラ読めないので、 もし突然江戸時代にタイムスリップしたとしても、 うまく言葉が通じて意思疎通できる自信は正直ない。
その当時は今よりももっと、 asparagusと石刁柏は近い発音だったかもしれない。
②竜髭菜
大正1年に出版された、南満洲植物目録に出てくる名称だ。
著者は矢部吉禎(やべ よしただ)さん。植物学者として中国の北京へ渡り、 中国大陸の植物を研究して資料をまとめていた。
南満洲植物目録の中では被子植物の項目に、 Asparagus Sieboldi Maxim キジカクシ 龍鬚菜(俗) という表記でアスパラガスが紹介されている。
(俗)というのは俗語という意味で、 この名称は正式な学名ではなく、 日常的に人々に親しまれている 呼ばれ方だと伝えている。
これはアスパラガスの見た目から来た漢字だ。 龍のヒゲみたいに見えるから龍鬚菜。
確かに緑色で鱗のような模様もあり、 先が筆のようになっている姿は 龍を連想させる。
龍鬚菜 という難しい漢字が 日本で使われるにあたって、 竜髭菜というふうに簡略化されたのだろう。
意外と「龍尾菜」とか 「小龍菜」でも良さそうだが、 当時の人々はヒゲと呼ぶことにしたのだ。
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アスパラガスの歴史
アスパラガスの歴史は古い。
今から4千年以上前には、 既にエジプトで食用にされていたそうだ。しかしその頃は育てるのが難しかったため、 貴重な高級食材として王族、貴族のみが食べたり、 神への供え物にされていたという。
そしてユーラシア大陸を徐々に北上して アスパラガスは世界に広まっていくのだが、 つい最近の19世紀になっても、まだ高級素材だった。 日本にも鎖国中の1781年に、 オランダ人が長崎に運んできた。 …が、高いし馴染みのない姿だったので、 ほとんど広まらなかった。
栽培が始まったのは大正時代になってからだ。 北海道に住んでいた下田喜久三さんが、 冷害に悩む北海道の農業を どうにかしたいと研究を続け、 1913年以降に欧米から アスパラガスの種を取り寄せたのだ。
そして北海道で育てやすいように品種改良を行い、 1924年には「日本アスパラガス株式会社」 という会社まで設立した。 そして栽培は大成功! アスパラガスは食卓の主要野菜として 躍り出たのであった。
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